著者によれば『小さくはじめよう —自分らしい事業を手づくりできる「マイクロ起業」メソッド』(斉藤 徹著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、自分自身の「幸せの循環」をつくるメソッド。世界に向けて挑戦するとか、市場を独占するというようなことではなく、あくまで“自分”に焦点を当てているわけです。

幸せは、他者に悩みを解決し、心から喜んでもらうことで循環する。そのために必要な技術や知見を磨くこと。そのために懸命な努力を続けること。しかし、あなたの脳は嫌いなことを続けてくれない。だからこそ、好きや強みを起点にして、自分の可能性を追求すること。それが、ゆたかな人生への近道なのだ。(「はじめに」より)

お金を儲けるためではなく、自分の可能性を追求し、ワクワクする人生を歩みたい。夢物語ではなく、現実の世界で実現したいという願いを読者に叶えてもらうために、著者は本書を書いたのだそう。自身の起業家としての経験、そして経営理論をもとに、「自分らしい事業」を手づくりするメソッドとして体系化したのだといいます。

かつて起業をするためには、立派な事業計画、お金や人など、多くのものが必要とされました。しかし現代は違います。テクノロジーの進化が、「事業づくり」を劇的に変えたわけです。たくさんのお金を集める必要もなく、多くの時間を使う必要も、苦悩を味わう必要もなし。

そして、いま大切なのは「小さくはじめる」こと。しかもそれは難しいことではなく、誰にでもできることだといいます。「最新の理論」をベースに小さくはじめ、スキマ時間にワクワクする事業を考え、挑戦すればいいというのです。

では、なにから始めればいいのか? Chapter 1「アイデアを生み出す」のなかから、基本的な考え方を抜き出してみましょう。

自分の真の目標「セルフ・コンコーダント・ゴール」を探す

小さく起業するにあたり、まずは「自分の真の目標」を考えることから始めていこうと著者は勧めています。自分が本当にしたいこと=真の目標はなんなのか、考えてみるということ。

この真の目標のことを「セルフ・コンコーダント・ゴール」という。これは、ベストセラーにもなった『ハーバードの人生を変える授業』の著者であり、心理学の博士でもある米国のタル・ベン・シャハーが唱えたもので、自分の真の欲求に基づいた目標を意味する。(42ページより)

もちろん、「これだ!」と自信を持っていい切れる目標を見つけることは決して簡単ではないでしょう。しかし、そのことについて考えるプロセスや経験はとても重要な意味を持つわけです。

ちなみにセルフ・コンコーダント・ゴールの探し方について、タル・ベン・シャハー氏はハーバードの授業で次のように説明しているのだといいます。

① 自分にできそうなあらゆることをリストアップする

② その中から、自分がしたいと思うことをすべて選ぶ

③ その中から、自分が本当にしたいことを選ぶ

④ 本当にしたいことの中から、本当に本当にしたいことを選び出す

(43ページより)

たしかにこれを参考にして考えてみれば、自分のセルフ・コンコーダント・ゴールを見つけ出すことができそうです。(42ページより)

自分にとっての本当の幸せとは?

ポジティブ心理学に、「本当の幸せはどこから来るのか?」という重要な問いがあるのだそうです。著者によれば、これはセルフ・コンコーダント・ゴールを考えるに際しても非常に重要な問いなのだとか。

仕事をしているとお金や出世など、外的な目標に心が向きやすい。対して、内的な目標とは、親密な人間関係や自己成長、組織や社会に貢献するなどに喜びを感じることをさす。(44ページより)

ポジティブ心理学の調査においては、「外的な目標を持つ人」は「内的な目標を持つ人」と比較してつねに未達成への不満を抱えていて、その達成度にかかわらず幸福度が低いことがわかっているのだといいます。

そればかりか、外的な目標を持つ人は「なにを所有しているか」に注意が向いており、社会的に導かれた“表面的な仮面人格”をつくりあげる傾向が強く、自己が希薄でもあるようです。

いいかえれば、「お金持ちになりたい」とか「有名になりたい」というような目標を持つ人は、お金や知名度を得たとしても、「もっとお金がほしい」「もっと有名になりたい」という欲求がさらに湧き出てきてしまう。そのため、結局は“幸福度が低い状態”が続いてしまうことになるわけです。だからこそ、内面的な目標が大切なのです。(43ページより)

「自分の真の目標」を探索する問い

著者はここで、セルフ・コンコーダント・ゴールを見つけるための問いをまとめています。

① 小さい頃、何をするのが好きだった?

② 今までで楽しかったのはいつ? 何をしたとき?

③ これまでの人生で、ゆったり落ち着いて、すごく平和な気分を味わったのはどんなとき?

④ 最高の気分を味わえるのは、どんなときだろう?

⑤ 一緒にいてすごく楽しい人は誰? どんなところが好き?

⑥ あなたがすごくこだわっちゃうことは何?

⑦ あなたがすごく大切にしているものは何?

⑧ 自分の人生の中で、すごく重要な出来事をあげると?

⑨ 何かを変えられるとしたら、何を変えたいと思う?

⑩ 今、あなたが夢中になっていること、はまっているものは?

⑪ どんな映画を見ると泣いちゃう? 共感する登場人物に共通点はある?

⑫ 好きなことを自由にできるとしたら、どんなことをする?

⑬ 考えうる最高の状態を実現できたとしよう。そこには何がある? 何が起きてる?

(45〜46ページより)

こうしたことを突き詰めていけば、おのずとセルフ・コンコーダント・ゴール、すなわち真の目標を見極めることができるのでしょう。(45ページより)


新たに事業をスタートさせるとなると、とかく大げさに考えてしまいがち。だからリスクも高まるわけですが、著者がいうように小さく始めるのであれば、自分にできること、すべきことが見えてくるかもしれません。なにより自分がしたいことを形にしたいのなら、参考にしてみる価値はありそうです。

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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン