私は「現金が一番便利」と思って生きてきました。予期せぬ出費をカバーするためには、簡単にアクセスできる緊急用の資金が重要だからです。
しかし、支出の月額平均6~9カ月分を超える余剰資金を現金で持つことは、大きなリターンを逃すことになりかねません。
私は以前、複数の口座に資金を分けることで、貯蓄目標を個別に把握することができ、それぞれの目標にアクセスしやすくなると推奨しました。万が一に備えたお金は、夢のバケーションに向けた資金とは別の口座に入れるべき、ということです。
そして、必要以上のお金を現金(または預金)で持ち続けることで、自分が何を失なっている(得られたはずのメリットを得られていないのか)を理解する必要があります。
現金や預金では「複利」を得られない
複利とは、元本に運用で得た利益をプラスして再投資し、より効率的に利益を得る方法です。そして、その複利の力こそ、投資におけるもっとも重要な原則の1つ。
なぜなら、現金でそのまま置いておくだけでは、投資した場合と同じ割合で利益が発生することはないからです。
時間が経つにつれて、「投資していれば得られたであろう複利」の損失は非常に大きくなります。
たとえば、2~3年後に住宅購入を検討しており、その頭金として1000万円を準備しているとしましょう。そのお金を0.1%の利子がつく普通預金口座に入れておくと、3年後には約3万円が増えて1003万円になります。
しかし、その1000万円を年平均7%の利回りをもたらす株式インデックス・ファンドに投資した場合は1230万円以上に増えていたはずで、その差は200万円以上にのぼります。
これが、複利の大きな可能性です。投資をせずにただ現金で貯金しておくだけでは、資産の成長を逃すことになるのです。
けれども、ここで重要なのは、将来についての中長期的な視点。
住宅購入のための頭金や車の購入、そのほかの大きな出費などが今後2~3年に必要だとわかっている場合は、比較的安定していてリスクの低い預金口座に預けておくことは理にかなっています(以前、 高金利が設定された普通預金口座の選び方を解説しています)。
「貯金 or 投資」を見極める方法
直近5年ほどで必要となる資金の貯金には、リスクの低い預金口座を優先しましょう。休暇や余暇のための資金や住宅購入の頭金、あるいは緊急時のための口座といえます。
一方で、長期的な貯蓄については、その資金を投資で運用したほうがよいでしょう。複利で時間をかけて資金を成長させることができるからです。
まとめると、短期的に必要となる資金には預貯金が適していますが、退職後の生活資金や子供の大学進学費用など、長期的な目標を達成するためには投資を選択することもできます。
「将来の計画」に合わせた行動が重要
日々の家計に追われていると、投資や貯蓄目標に目を向けることが後回しになってしまいがち。
しかし、理想的なアプローチは、現金でしっかりと緊急用資金を用意したうえで、それでも余剰となった現金を投資に回すことです。そうすれば、十分な流動性を維持しながら、より高いリターンを得ることができます。
ただし、本当に必要な現金の額と、長期的に投資できる余裕のある額を見極めるには、ある程度の具体的な計画が必要です。