せっかく働くなら、夢を持てる仕事がしたい──。そんな想いがあったとしても、多くの人はより現実的な道を選びます。

子どもの頃に憧れた「宇宙」や「空」に関わる仕事も、大人になると自分とは遠い世界のように思えてしまうもの。でも、実はその夢、キャリア採用というルートで叶うかもしれません。

今回お話を伺ったのは、異なるフィールドからIHIに転職し、宇宙開発事業の最前線に加わった梅澤伊織さんと海住亮太さんのお2人です。

総合重工業グループとして知られる株式会社IHI(以下、IHI)は、日本の航空宇宙分野をリードする存在として、日本初の国産ジェットエンジン開発やイプシロンロケット(※1)の開発に携わってきました。

同社が「空領域(くうりょういき)」と呼ぶ航空・宇宙・防衛事業領域は、その専門性の高さゆえに、未経験からの参入は敷居が高いと思われがち。ところが近年、IHIではキャリア採用に力を入れており、さまざまな経歴を持つ人々の挑戦を歓迎する風土があるといいます。

ともに30代でIHIの「空領域」に飛び込んだお2人に、それぞれの挑戦と、IHIでの仕事の魅力を語っていただきました。

なぜ「宇宙」を仕事に? キャリア入社の2人が語る転職事情

画像左:梅澤 伊織(うめざわ いおり)さん/株式会社IHI 航空・宇宙・防衛事業領域 宇宙システム事業準備室 プロジェクトグループ アシスタントマネージャー。衛星VDES(海洋向け通信衛星)を活用した新規事業開発に従事。
画像右:海住 亮太(かいじゅう りょうた)さん/株式会社IHIエアロスペース(以下、IA) 品質保証部 宇宙品質保証グループ スタッフ。ロケットの点火や分離に関わる品質保証を担当。

──まずはお2人が、宇宙開発の世界に飛び込もうと思ったきっかけから教えてください。

梅澤さん(以下、梅澤):私は以前メーカーでセキュリティ関係の企画の仕事をしていた経験があり、お客様の課題を解決することにやりがいを感じていました。でも、もっと社会全体の利便性を高めたいという思いが強くなり、その可能性が宇宙領域にあるのではないかと考えるようになったんです。

宇宙の現場では最先端の技術が活用されていますが、一般化が進み切っていない。IHIのキャリア採用サイトには、そこを開拓していくような仕事がたくさん出ていたので、これは非常におもしろいのではないかと感じました。

海住さん(以下、海住):私は材料メーカーで5年ほど働いていましたが、スキルの幅を広げるために材料をつくる側から使う側に行きたいと考えるようになり、コロナ禍のタイミングで転職活動をはじめました。

IHIを受けた理由は、キャリア採用者に広く門戸を開いていたからです。ロケットに関わるなんて航空宇宙工学を専攻した人でないと無理だと思っていましたが、IHIなら私のような宇宙事業と関連のない経歴でもチャレンジできると知り、応募しました。

──おっしゃるとおり「宇宙」の仕事というのは興味はあっても、未経験では難しいと感じてしまうかもしれませんね。

梅澤:そうですね。ただ私は、メーカーでの設計、事業計画、営業、シンクタンクでのコンサル業などいろいろ経験してきたこともあり、今までのビジネスの知識を宇宙分野で生かすことができれば、何か新しいものがつくれるのではないかという感覚はありました。

海住:私も品質管理系の仕事をしていたので、転職活動ではそこを軸にしていました。そのうえで扱う製品が変わるのであれば、ロケットなんて1番おもしろそうだなって。

でも以前は、IHIがロケットに深く関わっているということを知らなかったんですよ。ずっと宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)さんの事業だと思っていたので。

梅澤:確かに、僕もそうでした。

海住:だから、自分でもロケットに携われる可能性があるんだ!ってびっくりしました。

──お2人とも、宇宙への憧れのような気持ちは以前からお持ちだったんですか。

海住:雑誌のNewton等で宇宙関連の記事があれば読んでいました。大学では別の事を学んでいましたが、縁があって宇宙事業に携わる事ができるならやってみたいという気持ちはありましたね。

梅澤:私は正直に言うと、そこまで憧れは強くはなかったです。ただ、わりと漫画を読むのですが、宇宙というテーマがよく出てくるんですよね。

最近読んだ『チ。―地球の運動について―』(魚豊 作、小学館)という作品にも、宇宙という壮大なテーマが人間の好奇心をいかに刺激するか、その好奇心をつなぎ、世界を変えていこうとしたかという物語が描かれていました。私も好奇心が強いというか、自分の核となる部分なのでグッときて。壮大なテーマなのに未開拓の分野に強く惹かれたんです。

海住:宇宙をテーマとした漫画、いいですよね。私がはまったのは、やっぱり『宇宙兄弟』(小山宙哉 作、講談社)。NASAやJAXAのことが描かれていて、いわゆる宇宙の「ロマン」ではなく「リアル」を感じました。そういうものを通して、宇宙をすごく身近に感じることってありますね。

宇宙開発の最前線で、新規ビジネス開発とロケット打上げに挑む

──お2人の現在の業務内容について、簡単にご紹介ください。

梅澤:衛星打上げ後の新規ビジネス開発や事業化に取り組んでいます。特に海洋関係のDXにおいて、衛星がどのように貢献できるか、どうやって市場に浸透させていくかを考えています。

具体的にはVDES衛星(※2)の打上げ計画がありますが、単に打上げるだけでは一般化には至りません。打上げたあと、衛星をどう使っていくかが重要です。衛星で得たデータや衛星の通信システムなどを利用し、海洋産業の向上につなげる方策などを考え、これを事業化し一般化していくことが私の役割です。

海住:私が担当しているのは、ロケットの点火や分離に関わる品質保証です。先ほどもお話したように、ロケットの打上げは高い信頼性が求められます。

そこには古くから使われている信頼度の高い部品を使用していますが、それが機能しないと一瞬でミッション失敗につながってしまう。そのため、製品がきちんと働くように品質を確保することが重要だと考えながら、仕事に取り組んでいます。

──実際にIHIで働いてみていかがですか。

梅澤:宇宙の分野はJAXAを筆頭に国の関与が非常に大きく、あらゆる仕事がトップレベルに「緻密」と感じます。ステークホルダーが非常に多く、全員の承認を得る必要があり、しかも1つもミスできない。

海住:確かにロケット事業に関しては、本当に緻密というか、フェーズとしてはゆっくり進んでいきますね。日本の宇宙開発は品質重視で、これで大丈夫なのかと何度も確認を重ねながら着実に一歩一歩進めています。ロケットの打上げは非常にシビアな世界ですから、慎重にならざるを得ない面はあります。

ただその分、打上げに成功したときの喜びは大きいです。打上げがはじまると、私の部署の人たちは、みんなテレビにかじりつくようにして見るんですよね。無事に飛び立つように、すべての機能が正常に動くようにと願いながら。

そして成功した瞬間に「よかった!」という安堵とうれしさが込み上げてくる。自分たちのつくった部品が宇宙へ運ばれていくと思うと、高い緊張感と大きな達成感がありますね。

梅澤:ロケットの打上げは国を挙げての事業ですから、一個人ではとても関われないような立場の人とお会いする機会も増えて、キャリアとしては一気に数段上がるような感じもありますよね。

海住:ロケットの射場にはJAXAの方もいらっしゃるし、自社の経営陣も集結しますから。これほど各組織のトップが間近にいる現場というのも少ないでしょうね。

──キャリア採用ということで入社後は研修などに参加されたのでしょうか。

梅澤:IHIでは基本的に各自が教育プログラムを選んで受講する形式での自律型の教育制度が導入されています。

海住:IAではそれに加えて、より専門的な内容の教育講座が用意されています。基礎教育講座では、各部署のプロフェッショナルな社員が講師として教えてくれます。私は入社後半年ほどで、これらの講座を次から次へと受講しました。

──IHIの働き方や人事制度についての印象はいかがですか。

梅澤:IHIの人事制度には、目標設定に基づいてその達成度を評価する仕組みがあります。努力した分はきちんと評価され、昇進や昇給に反映される。がんばりが報われる環境だと感じています。

海住:私が良いと思うのはキャリアチャレンジ制度です。現在の所属組織に関係なく、社内の他部署の求人に応募することができます。いわば社内FA(フリーエージェント)制度ですね。キャリアアップを目指して、自ら手を挙げられるのは魅力的だと思います。

あとはワークライフバランスの取り組みも進んでいると思います。最近は男性の育休取得者も増えてきて、2カ月から3カ月取る方もいらっしゃいます。

社内公募制度や男性育休など、社員のキャリア開発と働きやすさの両面での取り組みが進んでいるのは心強いと感じます。

IHIが求める「変革人財」とは? 宇宙開発の未来を切り拓く2人の展望

──お2人の職場にはどんな方が多いですか。組織の雰囲気についても伺えればと思います。

梅澤:私の部署は新規事業開発ということもあり、キャリア入社組が多数います。バックグラウンドも実に多様でそれぞれおもしろい経歴の持ち主

人の話を聞く、知ろうとする、自ら動くといったことが自然にできる人が集まっています。居心地の良さがあると同時に、互いの知識を共有し、学びあえる、好奇心を刺激する環境でもありますね。

海住:品質保証部は営業、設計、生産など社内のさまざまな部署と関わるので、調整力のある人が多い印象です。各自担当製品に対する責任感も強いですし、何かあれば先頭に立って問題解決に当たるリーダーシップのある人が多いと感じます。

──IHIのキャリア採用では「変革人財」を求めていると伺いました。お2人の目から見て、「変革人財」とはどのような存在だと感じますか。

海住:まず必要なのは、自分をしっかりと分析できることだと思います。自己理解が深く、自分の強みを把握している人。そのうえで、IHIという会社とマッチするかを考えられる人ですね。

梅澤:私は、変革を行なうためにもっとも重要なのは、軸を持つことだと思っています。頭が固いとか融通が利かないという意味ではなく、ブレない芯を持っている人

それは仕事への姿勢かもしれませんし、あるいは生き方のようなものかもしれません。その軸を土台にして、変化を恐れず新しいことにチャレンジできる。そういう人が変革人財であり、社内に新しい風を運ぶ役割なのかなと捉えています。

──自分に軸があると、会社では人とぶつかってしまうこともありそうですが、そういう人ほどIHIには向いているかもしれませんね。

梅澤:そう思います。そういえば私も、内定を伝えられたときの面談で「君は組織に馴染むな」と言われたんです。「馴染んだら、むしろ君を採用したことはミスだと思うから」と。

海住:すごく深い言葉ですね…それは言えないですね、なかなか。

──お仕事での今後の展望をお聞かせください。

梅澤:私はブレずに、一般化です。衛星を活用した海洋分野の変革と、その事業化を通した一般化に注力していきます。

海住:IAは今後イプシロンSロケットの実証機を打上げ、それを皮切りに打上げ輸送サービスの本格化に挑みます。自分の携わった製品もそこに載りますし、私自身も射場で作業をすることになるので、きっちり成功させたいです。


自分の軸があるからこそ変化に強く、新しい価値を柔軟に生み出せるIHIの宇宙開発の未来を担うのは、そんなマインドを持った「変革人財」なのかもしれません。

IHIの「空領域」では、ロケット開発から人工衛星まで、多岐にわたる職種でキャリア人材が求められています。多くの人が憧れる「宇宙」という特別な環境で、あなたの可能性を存分に発揮してみませんか?

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※1 JAXAとの契約のもと、IHIエアロスペースが機体システムの開発を担当した人工衛星打上げ用固体燃料ロケット。
※2 VDES(VHF Data Exchange System)衛星とは、VHF帯(超短波)の電波を使い、船舶と人工衛星間でデータ通信を行うシステムを搭載した衛星。

Source: 株式会社IHI/Photo: 橋本越百