市販薬の便利さとリスク

サプリメント摂取による健康被害が問題になっているが、市販薬もまた自ら購入できる便利さと、副作用を起こすリスクが隣り合わせだ。今号ではビジネスパーソンの利用頻度が高い、風邪薬と胃腸薬の飲み方を紹介したい。

「のどの痛みや腫れ、咳、鼻炎、そして発熱といった、いわゆる風邪症状の8割近くはウイルスが原因によるもの。これは抗生物質では治りません」と、東丸貴信医師(平成横浜病院総合健診センター長)は解説する。

「基本的には自らの免疫力で治すものなのですが、私は我慢しないで早めに薬を服用したほうがいいと考えます。鼻炎にしてものどの痛みにしても、ベースには炎症があるので、放っておけば広がる恐れがあるからです」

風邪の初期であれば葛根湯などの漢方薬、または総合感冒薬を勧める。

「ただしイブプロフェン(解熱鎮痛成分)が主成分の総合感冒薬は、急性心筋梗塞などのリスクがあり、咳や痰を止める成分も血圧を上げる可能性がありますので、持病のある方は注意してください。穏やかな解熱作用で、比較的安全性の高いアセトアミノフェン(同)が含まれる総合感冒薬のほうがいいでしょう」(東丸医師)

アセトアミノフェンは高齢者や小児でも服用できるのがメリットだが、肝機能の数値が悪かったり、肥満気味な人は気をつけたい。市販薬に詳しい薬剤師の堀美智子氏(医薬情報研究所/エス・アイ・シー)はこう話す。

「アセトアミノフェンは長期の服用で肝機能障害が起きる恐れがあるので、アルコールを過量に飲む方は薬剤師に相談したほうがいいでしょう。低栄養状態の人、逆に太っている方も脂肪酸の処理によって多くなってくる酵素の影響で肝臓の機能が低下しやすいので、やはり気をつけてほしいですね」

重大な副作用につながる恐れがある

一方で効果が高い解熱鎮痛剤といえばロキソプロフェン。こちらは腎機能に悪影響が出やすいのがデメリットだが、強い痛みに効き、炎症をしっかり抑える。次ページに解熱鎮痛剤の特徴をまとめたので参照してほしい。

東丸医師の提案のように、さまざまな風邪症状があるなら総合感冒薬をすぐに服用して1〜2日を目処に治すのも一案だ。けれどもつらい症状だけ、それを重点的に抑える薬の飲み方でもいい。

のどの痛みや発熱、頭痛、関節痛には前述した解熱鎮痛剤、鼻水なら抗アレルギー薬、咳には鎮咳去痰薬、といった具合だ。

50年以上の薬剤師経験をもつ西澤啓子氏(西沢薬局)は「基本的に市販薬の外箱に記載される効能に症状を改善する成分が含まれていると考えればいい」と説明する。

注意点としては「風邪薬」と「解熱鎮痛剤」の併用を避けること。特に総合感冒薬によく含まれるアセトアミノフェンが重複し、国の規定量である一日の摂取上限900ミリグラムをオーバーして重大な副作用につながる恐れがある。