日本から遠く離れたブラジル・サンパウロ市に、大真面目に忍者を目指す人たちが通う道場がある。なぜ彼らは忍者になりたいのか。サンパウロ在住フォトグラファー兼ライターの仁尾帯刀さんが取材した――。

ブラジルでも「忍者」は大人気

今年2月15日にNetflixから配信された「忍びの家 House of Ninjas」は、配信2週目に「週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)」で1位を獲得するなど、国内外で高い支持を集めた。「現代にもし忍者がいたら」がテーマの本作は、改めて世界における忍者人気の高さを示した。

ドラマなどではすっかり「空想」として描かれがちな忍者だが、世界には実際に「忍者」を目指して鍛錬に励む人たちがいる。

世界で広がる「忍び」のネットワーク

ブラジルでは夏の終わりにあたる3月半ばのとある日、サンパウロの3階建て商用ビルの最上階にひっそりと構える道場「武神館服部半蔵道場」では、総勢23名の門下生が稽古で汗を流す姿があった。

道場で主に教えるのは体術、棒術と剣術だ
筆者撮影
道場で主に教えるのは体術、棒術と剣術だ

師範を務めるのは、理学療法士のフェルナンド・カルドーゾさん(47)。フェルナンドさんの道場は、「世界で最も有名な忍者」として知られる戸隠流忍法34代目宗家の初見良昭氏(92)が1972年に千葉県野田市に設立した「武神館」から正式に「のれん分け」された道場だ。

フェルナンドさんも、かつて初見さんの道場の門をたたいた「門下生」のひとりだった。初見さんの道場に通う8割は外国人が占めるといい、門下生は世界50カ国以上に40万人はいるというから“忍び”のネットワークはむしろ世界で広がっているようだ。