次々とヒット商品を生み出す夫妻が福岡にいる。「こどもびいる」や「カバ印アイスキャンデー」といった人気商品を手がけてきた浅羽さん夫妻は、もともとはもんじゃ焼き店のアルバイト仲間だった。なぜ2人は「売れっ子プランナー」になったのか。フリーライターの川内イオさんが取材した――。
写真=戸高慶一郎
福岡・能古島を拠点に活動するプランナー、浅羽雄一さん(左)と八智代さん夫妻

ヒットの仕掛け人の意外な前職

「こどもびいる」という商品がある。瓶のラベルがビール風の炭酸飲料だ。佐賀県小城市の友桝飲料が2004年に発売し、一時期は年間100万本を超える大ヒット商品になった。

こどもびいる
画像提供=浅羽雄一
浅羽さん夫妻が考案した「こどもびいる」。発売から20年を迎え、これまで1000万本以上が売れた

素朴で懐かしい雰囲気の「カバ印アイスキャンデー」は都内でも売られているから、見たことがある人も多いだろう。これは福岡県柳川市にある椛島氷菓が2011年に発売したもので、現在は年間80万本売れる看板商品だ。

カバ印のアイスキャンデー
画像提供=浅羽雄一
椛島氷菓のカバ印アイスキャンデー。カバ印のロゴは八智代さんがデザインした

佐賀県小城市の老舗和菓子店、村岡総本舗が2019年に売り出したのは、伝統の羊羹ようかんをカステラで挟んだ「シベリア」。レトロなデザインの包装や缶が注目を集め、人気商品になった。現在も年間1万2000個のペースで売れている缶入りのシベリアは、ガチャガチャ(カプセルトイ)として企画された「全国のかわいいおやつ」で採用されている。

シベリア
画像提供=浅羽雄一
カステラで羊羹を挟んだ菓子「シベリア」。伝統製法の切り羊羹は自家製の餡に挟まれており、計5層になっている

この3商品の共通点は、九州発ということ。そしてほとんど知られていないことだが、開発の舞台裏にはひとりの商品プランナーがいる。

博多湾に浮かぶ能古島で暮らす、浅羽雄一さん。彼はデザイナーで妻の八智代さんとともに数多くのローカル商品の開発やパッケージデザインに携わり、思わず手に取りたくなる「ちょっと気になる商品」を生み出してきた。意外なことに、浅羽さんはもともと博多にあるもんじゃ焼き店のオーナーだった。

なぜ、飲食店の店主がヒットの仕掛け人に?