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新型コロナウイルスの遺伝情報を初めて公開した中国人研究者が研究室からの立ち退き命令を受けていたことが判明


世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の塩基配列を初めて公開したウイルス学者の張永振(チャン・ヨンジェン)氏が、所属研究室を閉鎖される騒動に見舞われていたことがわかりました。

Chinese virologist who was first to share COVID genome sleeps on street after lab shuts
https://www.nature.com/articles/d41586-024-01293-0


First scientist to publish Covid sequence in China protests over lab ‘eviction’ | China | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2024/apr/30/first-scientist-publish-covid-sequence-china-evicted-from-lab

チャン氏はシドニー大学のウイルス学者であるエドワード・ホームズ氏とともにSARS-CoV-2の塩基配列を世界で初めて公開した科学者です。この行為は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの迅速な開発を可能にした重要な要因として、世界中で広く認められていると科学誌のNatureは指摘しています。

2020年以降、チャン氏は国際的な称賛を受けていて、科学界の重要な発展を支える人々の年次リスト「Nature’s 10(今年の10人)」の2020年度版にも選ばれていました。

by Zhang Wen/Communication University of Zhejiang

そのような著名な人物であるにもかかわらず、チャン氏が所属していた復旦大学上海公衆衛生臨床センター(SPHCC)が突如としてチャン氏の研究室を閉鎖し、チャン氏とそのチーム全員に退去を命じたことが伝えられました。

チャン氏は中国で人気のSNS・Weiboで「突然立ち退きの警告を受け、警備員がやってきて研究室への立ち入りを禁止しました」と投稿し、予告なしの強制措置に懸念を表明。後にSPHCCは「当該研究室は改修が必要な研究室の一つであり、チャン氏には代替スペースを提供しました」との声明を発表しましたが、チャン氏によるとそのような申し出は退去後に提示されたもので、代替となる研究室は病原体を含むサンプルを保管するのに必要なバイオセーフティ条件を満たしておらず、チャン氏の要求にはそぐわないものだったとのこと。

研究室の閉鎖後、チャン氏は元いた研究室の前で座り込みの抗議活動を実施しました。チャン氏によると、抗議活動には学生らも参加し、研究室の扉の前に布団を敷いて一晩中居座るなどしたそうです。


抗議活動や、SNSで問題を報告したことが功を奏したのか、立ち退きからわずか2日ほどで問題が解決し、チャン氏は元いた研究室で通常通りの研究活動を行えるようになりました。チャン氏は「チームメンバーは当分の間自由に研究室に出入りすることができます。長い間私とチームをサポートしてくれたすべてのネチズン、あらゆる分野の人々、学生らに感謝したいと思います」と述べました

イギリスメディアのThe Guardianによると、チャン氏は2020年1月にSARS-CoV-2の塩基配列を解析し、中国政府の承認を得ずに公開した後、ウイルスがまん延する可能性を中国当局に警告したそうですが、翌日に保健当局によって研究所が閉鎖されるという憂き目に遭っていたとのこと。それ以来、チャン氏は一連の挫折と降格、解任の対象となっていたとそうです。

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in Posted by log1p_kr

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