若き起業家(少なくとも、かつて若くして創業した起業家)という存在は、注目されるものです。ジョブズゲイツ、ペイジ、ブリン、ザッカーバーグなどなど…例を挙げたらキリがありません。

しかし、アメリカ合衆国国勢調査局とマサチューセッツ工科大学(MIT)の2人の教授が実施した調査で、「成功する起業家は、テクノロジー分野においても中高年世代である傾向がある」ということがわかりました。

一般論として、60歳の起業家は、企業を立ち上げて成功する確率が30歳の起業家の約3倍、立ち上げた企業が最終的に全企業の上位0.1%(そう、0.1です)に入る確率は約2倍となっています。

たしかに、若い創業者のほうが技術に精通しており、かつリスク回避しない傾向は強いでしょう。

しかし、年配のスタートアップ創業者のほうが経験が豊富で、スキルセットも幅広く、多様なネットワークを有しており、資本へアクセスする方法も多く持っているのです。

スティーブ・ジョブズもこう言っています

将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることはできません。できるのは、あとからつなぎあわせることだけです。

だから、そうした点が将来どこかでつながるのだと信じるしかありません。直感、運命、天命、カルマ…何にせよ、何かを信じる必要があるのです。

私はこのやり方で後悔したことはありません。むしろ、これまでの人生において何よりも重要な考え方になっています。

だからこそ、「生かすことができる」という時、重きが置かれているのは「できる」の部分です。

何事にも言えることですが、自分が持っているスキルや知識を使って何をするか、そしてさらに重要なことに、たとえそれが「今後どのように生かされるか? どのようにつながっていくか?」がその時点ではわからなくても、自分が持っているスキルや知識をさらに磨こうとし続けることが、何よりも大切なのです。

特に、すでに高いレベルで成功している場合はそうです。

大人気司会者に学ぶ「点と点のつなぎ方」

たとえば、カート・メネフィー。アメフトファンなら誰もが知っていますが、メネフィーはアメリカでもっとも注目されるNFL(プロアメリカンフットボールリーグ)の試合前の番組「Fox NFL Sunday」とともに、Foxの試合後の番組「The OT」でも司会を務める人物です。チャンピオンズリーグでも、全米オープンでも、UFC(総合格闘技団体)でも番組で司会を務めたことがあります。

さらにうえに登り詰めるというのは、すでにトップに達している場合には難しいものです。

ところが、ここ数年はFOXのUFL(プロアメリカンフットボールリーグ)中継の実況を担当。Fox 5の朝の番組「Good Day New York」の司会者でもあります。2022年には、ノースウェスタン大学で公共政策・行政学の修士号を取得しました。

すでに持っているものをさらに磨くということを、メネフィーは理解しているのです。そして、明確な終わりが見えない道に踏み出すということも。

よく理解したうえで直感で動くのが好きなんです」とメネフィーは言います。

情報は集めますが、ある時点で自分の直感を信じなければなりません

どんなに分析しても、ある時点で岐路に立ったら自分で選択しなければなりません。すべきことはして…でもそのあとは、正しいと感じることをするんです。

この方法が少しストイックに聞こえたとしても無理はありません。起こることすべてをコントロールすることはできませんが、それにどう対応するかはコントロールできます。時に、ある決断が正しかったのは、それを正しい選択にしたからなのです。

十中八九、決断がうまくいくのは自分がそれを正しいものにしたからです。

うまくいかない1回は不運です…が、うまくいくと「確信」が持てるのをじっと待っていても、十中八九うまくいくということはありません

「それに」とメネフィーは続けます。

もしうまくいかなかったら、「うまくいかないということをうまくいかせるんだ」といつも思っています。

好奇心があれば、何か答えが見つかるものです。「欲しかった」答え、望むタイミングでの望んだ答えではないかもしれない…けれど、「何かしら」の答えはいつも見つかります

たとえその答えが、失敗の経験から学び、次に進むことであったとしても。

新しいことに挑戦するには、それなりの自信も求められ、すでにある程度の成功を経験しているのであれば、もう一度初心者に戻ろうという意欲も必要です。たとえどんな見返りがあるのかわからなかったとしても、です。

「ほかに様々なことを追求すると、わかります」とメネフィーは言います。

いろいろと違うことをすることで、すでにしていることが上達するのです。

大学に戻って修士号を取ることはどうか? それがニューヨークの朝のニュース番組につながるとは思いませんでしたが、公共政策について知識を深めようという努力を見せた結果、そうなりました

旅でも同じです。旅は様々な扉を開いてくれます。知らない人と経験を共有し、つながる感覚を生み出してくれるのです。

また、これまでずっとベースを弾いてきました。それが結果として、クリスチャン・マクブライドやスティング、デイヴ・グロール(Foo Fighters)といった人たちと番組の中で共演することにつながりました。

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メネフィーを突き動かす原動力とは?
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