サイエンス

有毒なガスから人体を守る高機能なマスクはどのような仕組みで防護しているのか?


映画などで軍隊やテロリストなどが装着しているガスマスクは、汚染された大気や有毒なガスから身を守るために使用されています。同じように有毒ガスの遮断は、高度なフィルターを備えた通常のマスクでも可能ですが、そのようなマスクはどのように機能しているものなのか、YouTubeチャンネルのTED-Edがアニメーションで解説しています。

How do gas masks actually work? - George Zaidan - YouTube


ガスマスクは軍隊や戦闘員の威圧的な装備として映画やドラマなどで見かけることが多いですが、安価で手に入る高機能なマスクも、ガスマスクに近い機能を持っています。森林火災によって有毒ガスが広まったり、温暖化により有害なオゾンが大気中に増えたりした場合、高機能なマスクで煙や有毒ガスから身を守ることができます。


ガスマスクと通常のマスクで共通する最初のルールとして、「密閉されている」ことが最低限の条件です。どんなに優れた機能を備えているマスクでも、隙間があって空気が入り放題だったら、何の役にも立ちません。


マスクが密閉されているという前提で、汚染物質を防ぐ主な方法は2つあります。1つは、細かなフィルターで物質のサイズに応じて遮断する方法。もう1つは何らかの方法で特定の化合物を引きつけてとどめる方法です。


しかし、例えば森林火災の現場では、さまざまな化学物質が生成されます。火災に対処する人は、至近距離でそれらの高濃度な物質に直面するため、どのようなフィルターでも有害物質を遮断することはできません。そのため、消防士などは酸素ボンベのような空気供給装置をガスマスクと合わせて使用しています。


一方で離れた場所では、さまざまな化学物質は凝集し、直径2.5ミクロン未満程度の小さな固体もしくは液体の粒子に変わっています。この粒子は危険なものですが、煙として目に見えることが多く、また、最も基本的なフィルターで防ぐことができるほど十分な大きさです。


人間の髪の毛のおよそ10分の1ほどの幅であるポリプロピレンまたはガラス繊維でできたフィルターは、基本的にはふるいのように粒子の大きい物質を防ぎます。


加えて、ポリプロピレンの繊維は繊維の網よりもはるかに小さい粒子を捕捉することができます。これは、原子、イオン、分子の間に働くファンデルワールス力によるもので、細かい粒子は繊維にくっつくようにして捕らえられます。


さらに、繊維の中に帯電ファイバーを用いることで、繊維にくっつく軌道を通っていなかった粒子を引きつけることも可能。


このようにして、複雑な機能を備えていない単純な「N95マスク」でも、密閉とフィルターによって粒子状物質の少なくとも95%を捕捉できるそうです。


また、アメリカ労働安全衛生研究所(NIOSH)の定める最高ランクの基準である「N100」のマスクや高精度の空気清浄機は、少なくとも99.97%の粒子を捕捉できると言われています。


酸素よりもわずかに大きい程度の有害物質は、密閉やフィルターで完全に捕捉することは困難です。そのため、そのような物質をろ過して安全な空気のみ通過させる機能として、活性炭がフィルターとして備わっています。


活性炭は顕微鏡レベルで見ると穴が多く黒い蜂の巣のように見えますが、その高度に微細な多孔性構造はオゾン分子のような小さな物質を捕捉することができます。


しかし、活性炭だけでは硫化水素や塩素、アンモニアといったその他の汚染物質を遮断しきるのには不十分です。そのため、汚染物質が酸性の場合はフィルターに塩基性化学物質を注入することで捕捉したり、逆に塩基性汚染物質を捕捉するために酸を注入したりと、化学反応によってより高度な保護を適用できます。


ガスマスクやN100マスクは、フィルターや化学反応によって高度な防護を実現していますが、それでも完全に防ぐことはできない場合も多いとのこと。そのため、脅威レベルが高い場合には、しっかりと密閉して換気扇をオフにした屋内にとどまることが賢明です。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1e_dh

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