アットホームな会社はなぜ弱体化するのか

部下にうまく仕事を任せることのできる組織は、利益を獲得し成長できます。そのような組織になるためには、緊張感が必要です。上司と部下が「なあなあ」になってしまえば、組織はすぐに崩れます。上司は部下と仲良くする必要はありません。部下とは距離を置き、適度な緊張感を持って役割を果たす。それが職場のあるべき姿です。上司は「いい人」になろうとしてはいけません。

識学 代表取締役社長 安藤広大
識学 代表取締役社長 安藤広大
早稲田大学を卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングス(現ライク)、ジェイコム取締役営業本部長を経験。13年に組織マネジメント理論の「識学」に出合い衝撃を受け、識学講師として独立。15年、株式会社識学を設立。

こうした私の考え方を冷たいとか厳しいと批判する人もいますが、すべて「識学」というロジックにもとづいた考え方です。識学とは「意識構造学」という学問からとった造語で、組織内の誤解や錯覚がどのように発生し、どうすれば解決できるか、その方法を明らかにしたマネジメント手法です。

かく言う私も以前は、部下に任せることをしないリーダーでした。自分が頑張ることで成果を上げ、それを部下に分け与えるようなやり方だったのです。ところがそれでは部下がまったく育たず、私の負担は増すばかりでした。それが10年ほど前に識学と出合い、意識ががらりと変わりました。それまで人のマネジメントとは、学校で学ぶ教科にたとえると「国語」の領域だと思っていました。周囲の人たちの感情を読み取り、自分なりの解釈をする必要があると思っていたからです。ところが実際は、「物理」や「数学」と同じように客観的な正解があり、公式がある世界だと気づいたのです。

識学を世の中に広めるため、会社を設立

そこで、識学を世の中に広く知ってもらおうと、独自の基幹理論として整備したうえで、「株式会社識学」を設立しました。当社の組織づくりも識学をベースに行ったところ、起業からわずか3年11カ月で東証マザーズへの上場を果たすことができました(現在は東証グロース市場に移行)。

現在、4000社以上が識学を取り入れており、その中から毎年10社を超える企業が新規上場を果たしています。この結果からも、生産性向上と組織の成長を図るうえで、今もっとも有効なロジックであると自負しています。

識学の基本的な考え方は、組織を「仕組み化」して動かすこと。仕組み化とは、ルールを決めて運営することです。「仕組み」とか「ルール」という言葉にネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、ロジックの確かさは、当社と導入企業の成長ぶりが証明するところです。