為替介入と見られる円買いが繰り返された

大型連休中で日本人参加者がほぼいない市場で、政府・日銀による為替介入と見られる大量の円買いが繰り返された。瞬間的に1ドル=160円を付けたドル円相場は、介入によって1ドル=153円台まで押し戻された。為替介入は、そろそろ相場の方向性が変わるのではないか、と市場参加者が思っていたタイミングでは効果を発揮するとされるが、日米の経済環境に大きな変化はない。そうした中でいつまで介入効果を保てるのか。為替介入のドル原資が無尽蔵にあるわけでもない。介入効果が切れれば再び円安に動き出すことになりかねない。

乱高下した円相場を示すモニター=2024年5月2日午前、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
乱高下した円相場を示すモニター=2024年5月2日午前、東京都千代田区

ドル円相場は「34年ぶりの円安」水準だと報じられている。だが、実際にはドル自身も劣化が進んでおり、34年前の1ドルの価値は今の価値とはまったく違う。しばしば「円の実力」を見るうえで使われる「実質実効為替レート」(2020年を100とした指数)は、算出が始まった1970年の75.09を大きく下回り、2024年2月には70.79を付けた。1970年のドル円レートは1ドル=360円。今やそれを日本円の実力は下回っているということになる。

この指数で円が最も強かったのは、1995年4月の194.15。当時の為替レートは1ドル=79円75銭だった。指数で単純に見ると、194.15から70.79まで64%も下落している。ほぼ3分の1ということだ。

株価はマイナスになっていると見ることもできる

それだけ円が「劣化」しているのだ。大型連休で海外に出かけた旅行者が異口同音に言うのは物価の高さ。ハンバーガーが3000円といった値段になり、支払いの時に日本円に換算して考えるのは止めたという声も聞く。世界的なインフレによる物価上昇もあるが、それにもかかわらず大幅な円安が続いていることが圧倒的に大きい。日本円の価値の劣化は深刻だ。

一方で株や土地、貴金属など資産価格は大幅に上昇している。日経平均株価は3月末には4万円に乗せ、一時3万7000円台まで調整したが、再び3万8000円に戻してきた。だが、本連載でも何度か紹介しているように、日経平均株価を円建ての金の小売価格で割った指数、つまり金建ての日経平均を見ると、岸田内閣発足時を100として、4月30日は73.1。日経平均が100から135に上昇しているのとは全く違った姿が見えている。株価の上昇は岸田内閣発足時以来の円の劣化で説明がつくどころか、実態はむしろ大幅なマイナスになっていると見ることもできるのだ。

外国人がせっせと日本株を買っているのも、円安によってドル建てなどで割安感が強いからに他ならない。価格がうなぎ登りの高級マンションも、宝石や高級時計が大幅に値上がりしているのも、円が劣化しているために、日本円建ての価格が猛烈に上昇して見えるだけ、とも言えるのだ。