バブル世代(54歳~59歳付近)【原則】持ち上げてプライドを守る

恥ずかしいくらいよいしょしよう

バブル世代(1965〜70年生まれ)の人たちと仕事をするときに重要なのは、「プライドを傷つけない」ことです。

バブル世代が社会に出た頃は、その名のとおりバブル景気真っ只中。誰が何をしてもうまくいきました。思いつきの企画であっても「検討が足りない」などと突き返されることはありません。「いいじゃん、いってみよう!」とすんなり通してもらえました。

どんなイベントにも人が押し寄せ、浮かれたようにお金を使っていきました。そうして得られたあぶく銭を、また消費や浪費に惜しげもなく使っていたのです。いくらでもお金が儲かるので、人々は睡眠時間を削って働きつづけました。「24時間戦えますか」が本気の合言葉だったのです。

実際のところ、景気に後押しされた“成功”が少なくありませんでした。しかし、当時若手だったバブル世代は、「自分には才能がある」と勘違いしてしまいました。やがてバブルがはじけ飛び、日本は失われた30年と呼ばれる暗黒時代に突入します。

失われた時代に自ら失敗を経験したり、リストラで会社を追われる団塊世代の先輩世代を目の当たりにしたりして、自身の驕りや慢心に気づき考えを改めた人も多いでしょう。しかし、一度手にした成功体験はなかなか手放せません。心の奥底では、自分の仕事ぶりに「プライド」を持っている人が少なくないのです。

バブル世代の部下を味方につける方法

そうしたバブル世代が今、次々と役職定年を迎え職場の一般社員になっています。定年退職後、再雇用や再就職した人もいるでしょう。いずれにせよ、バブル世代が「指示する側」から「指示される側」になっています。

しかし、人間は立場が変わったからといって、すぐさま意識まで変えられるものではありません。日本を引っ張ってきた自負のあるバブル世代は、「なんで俺がこんな若造に指示されなきゃいけないんだ」という意識がどこかにあります。

対応を間違えると、バブル世代は「本能的に」指示を聞かなくなってしまいます。場合によっては、愚痴を言いふらして不満分子を集結したり、平気でチームの足を引っ張ったりしかねません。年上部下を持ったら、先手を打ち“味方につけておく”ことが肝心です。

先日、ある企業で部長に抜擢された20代のビジネスパーソンが「職場の人間関係についてアドバイスしてほしい」と、私のところに相談にやって来ました。聞けば自分が出世で追い抜いた50代の課長とそりが合わず、何かにつけて突っかかってくる。理由はわからないが、困っているというのです。

私が「辞令が出たとき、その方とはどういうコミュニケーションを取ったのですか」と聞くと、「特に何もやっていません」とのことでした。私はさもありなんと思いました。

その課長が本当に性悪で「こいつを引きずり降ろしてやろう」と悪意で突っかかっている可能性は低いです。自分の不甲斐なさと、年下に仕えなければならなくなった情けなさと、居心地の悪さから本能的にそうした態度を取っているのです。

私は会社に戻ったらすぐに課長と話し合いの場を設け、次のように言ったらよいとアドバイスしました。「このたび私は、○○さんのおかげで部長になれました。内心『○○さんを差し置いて自分など』と思っていたのですが、数週間やってみてよくわかりました。やはり私にはこの大役は不相応です。しかし、今さら辞退するわけにもいきません。そこでご相談なのですが、ぜひとも○○さんのお力をお貸しいただけないでしょうか」

ポイントは「自分を下げること」です。「私には不相応」「荷が重い」という旨を伝えつつ、「お力をお貸しいただきたい」と今後の仕事をお願いする。すると課長は溜飲を下げ、プライドを保つことができます。「わかればいいんだ。若いから昇格に浮かれて挨拶が遅れたことには、目をつぶってやろう。よしわかった! 力を貸してやる。困ったことがあったらいつでも相談に来ればいいよ」