海外のお客様の心もつかむ ファンをつくる接客術』(仲亀 彩 著、ぱる出版)の著者は、接客講師/接客コンサルタント/鉄板焼シェフ。15歳のときに接客業のアルバイトを始めて以来、接客業に従事してきたという実績の持ち主です。

昨年まではウェスティンホテル東京の鉄板焼店でカウンターシェフを担当しており、その当時のお客様の指名・リピート率はNo.1。これまでに接客したお客様は国内外合わせてのべ15万人になるのだといいます。

注目すべきは、そんな著者が本書の冒頭で「お客様を自分のファンにしましょう」と提案している点。ここでいうファンとは、こちらのことを「いいね」とってくれる人、推してくれるお客様のことだそう。ファンができると、それまでにない「変化」が起こるというのです。

自分のしてきたことや、自分のやり方・方法、「これで大丈夫かな? 合ってるかな?」と思っていたことに対し、他の人から「いいね」と言ってもらえることで、自分の中に安心感が生まれます。

その安心感が何度も積み重なると、自信になります。これが、あなたの仕事での行動やマインドに、確かな変化をもたらします。

そして、仕事での変化は、プライベートでの行動や思考・発言にも、大きく影響を及ぼします。自己肯定感や承認欲求の満たされ方も変わってくるでしょう。(「はじめに」より)

そうなれば当然、収入や仕事の幅、規模も変わってくるはず。なぜなら、その人がもたらすものに価値を感じる人が多ければ多いほど「仕事を一緒にしたい」と思う人も多くなるからです。その結果、やりたい仕事を選べるようにもなるでしょう。そのような理由から、ファンづくりは早ければ早いほどいいと著者は考えているわけです。

そうした考え方を軸として、変化し続ける社会に見合ったノウハウや、接客の本質が明らかにされているのが本書。きょうは第1章「接客は最高のツール」に焦点を当て、接客の基本を再確認してみたいと思います。

仕事は人間関係が10割

忘れるべきでないのは、仕事がすべて人間関係で成り立っているということ。

オンライン上だけでのやりとりやリモートワークなど、以前にくらべれば人と直接関わる機会が減った仕事もあります。しかしそれでも、人間関係は不可欠。そう信じて疑わないからこそ、著者は「仕事は人間関係が10割」だと主張するのです。

商品やサービスの向こう側には必ず人がいます。

一見、人間関係とは関わりのなさそうな仕事でも、直接関わる仕事でも、どちらも人間関係が10割です。(15ページより)

仕事の本質は、人を喜ばせたり、人をよりよい状態にすること。直接人と関わっていないような仕事でも、どこかで、向こう側にいる人とつながっているわけです。

また、人が動かなかったり、関わる人の数が少なかったりすれば、動く金額は小さくなります。一方、誰かが何かをつくったとして、それを欲しいと思う人が大勢いたり、関わる人が多かったりすれば、大きなお金が動きます。そうすると、たくさんのお金を得るチャンスが生まれます。(16ページより)

それどころか、人とのつながりによって新たな道が開けたり、新しい仕事を得て人生が大きく変わることもあるでしょう。そういう意味でも、人と接することは重要。しかもその能力は、努力によって磨くことができるのです。(14ページより)

接客で大事な2つのマインド1「尊重する気持ち」

「接客は、現代で生きる限り、一生使えるスキル」だと断言する著者は、接客をするうえで持っていたい2つのマインドを紹介しています。

まず1つ目は、人を尊重する気持ち。それは、相手の主義主張や感情を大切に思い、相手とのコミュニケーションを円滑にすることにつながるからです。

これは相手に媚びへつらうようなお世辞を言ったり、自分に嘘をついたりすることではありません。

接客業という職業であっても、私はお客様にへりくだる必要はないと考えています。もちろん、サービスを提供する人、提供される人という立場の違いはありますが、接客というのは人と人との交流です。自分もお客様も互いに気持ちのよい状態、関係になるのがベストです。(19ページより)

接客は人と人とのコミュニケーションなので、相手を尊重しながら交流すれば、関係を育みやすいはず。そこで著者は、次のように提案しています。

話を聞くときに、相手を尊重しながら話を聞いてみましょう。

質問をするときに、相手を尊重しながら質問してみましょう。

意見を言うときに、相手を尊重しながら意見を伝えてみましょう。(20ページより)

これらを続けていると、相手から「自分を尊重してくれる人だな」と感じてもらえるようになるわけです。ただし、無理をしないことも大切。(18ページより)

接客で大事な2つのマインド2「まごころ」

大事なマインドの2つ目は「まごころ」で、それは著者がいちばん大切にしているものでもあるといいます。

私が思う「まごころ」を込めたサービスとは、相手に寄り添う気持ちで、相手が本当に求めるものは何かを察して提供することです。(23ページより)

重要なのは、自身が提供するサービスをお客様にお渡しする際、どのような気持ちで接しているか。そのため、「自分が提供するサービスにどんな意味があるのか」「なぜこのサービスをするのか」「相手は本当はなにを求めているのか」について、いま一度考えてみる必要があるわけです。

もちろん、日々の業務に追われて、一挙手一投足に「まごころ」を込めるのは難しいかもしれません。その場合は、お客様に提供するその瞬間に、「まごころ」を込めてお渡しする、ここからやってみると始めやすいです。(23ページより)

大それたことをするのではなく、ちょっと配慮を加えるだけでもいいということ。(22ページより)


本書を読んでみて、考え、さらには行動してみれば、自分なりの成功法則をつくることができるかもしれません。だとすればそれは、接客業に携わる方にとって大きなポテンシャルとなってくれることでしょう。

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Source: ぱる出版